相続手続きどうすればNO9~遺産分割協議をする②(海外居住、未成年者、認知症、行方不明)~

相続手続きどうすれば―6.遺産分割協議をする②(海外居住、未成年者、認知症、行方不明)―

相続手続きどうすればNO1で確認した全体像と流れの6番目、「遺産分割協議をする」の注意点について。
NO1相続手続きの全体像と流れはこちら
遺産分割協議をするの概要は、NO8をご覧ください。
NO8遺産分割協議をする①(現物分割・換価分割・代償分割・共有)はこちら

遺産分割協議は全員の参加が必要!

遺産分割協議は、相続人全員の参加が必要です。
(正確には、相続分を譲り受けた者、包括遺贈を受けた者、遺言執行者も含まれます)
とは言っても、相続人全員が一同に集まって話し合いをする必要はありません。
相続人全員が同意した内容で遺産分割協議書を作成し、相続人全員が実印を押せば遺産分割協議は成立します。
では、相続人に次のような人がいる場合は、どうするのでしょうか。
海外に住んでいる
未成年者
認知症などで判断能力がない
連絡がつかない、見つからない、行方不明

相続人が海外に住んでいる!

相続人が海外に住んでいるような場合、わざわざ日本に来て話し合いに参加しなくても大丈夫です。
郵送など利用して、相続人全員が同意した内容で遺産分割協議書が作成できれば、遺産分割協議は成立します。
遺産分割協議書には実印を押し、印鑑証明書を添付する必要がありますが、日本に住民登録がないと日本で実印をつくれません。
では、どうするのでしょうか。
実印の押印と印鑑証明書の添付の代わりに、遺産分割協議書に署名(署名及び拇印)して、署名証明書(署名及び拇印証明書)を添付します。
この手続きは、居住地の在外公館日本大使館、総領事館)で行います。
居住地の公証人Notary Public)の認証を受ける方法(宣誓供述書、AFFIDAVIT)もあります。

相続人が未成年者!

相続人が未成年者の場合はどうなるでしょうか。
遺産分割協議は、法律行為です。
未成年者は法律行為を行うことができず、親権者が代理法定代理)します。
相続人が未成年者の場合、親権者が未成年者に代わってが遺産分割協議に参加することになるのです。
ただし、多くの場合、親権者も相続人ということになります。
例えば、夫が亡くなって、相続人が妻と子(未成年)の場合、
妻と、子(未成年)の親権者である母が遺産分割協議をすることになりそうですが、そうはいきません。
妻と、子を代理する母は、同一人物です。
妻が子の権利を無視して、相続財産の全てを自分が相続するなど自由に遺産分割することができてしまいます。
この状態は、利益相反と言われ、利益相反行為は認められていません。
利益相反行為では、たとえ子に有利な内容でも、遺産分割協議が成立しないことになっています。
では、どうするのでしょうか。
家庭裁判所で、未成年者の特別代理人の選任申立をすることになります。
相続人以外の者、相続人ではない親族などを特別代理人として選任してもらうのです。
未成年の子が何人かいれば、それぞれの子に特別代理人を選任してもらいます。
選任された特別代理人が、未成年の子に代わって遺産分割協議に参加することになります。
ここで大切なのは、誰が特別代理人になるかより、遺産分割協議の内容です。
特別代理人の選任申立をする際に、家庭裁判所に遺産分割協議案を提出しますが、その内容が重要となるのです。
一般に、未成年者の権利保護のため、未成年者に法定相続分は確保されるような遺産分割協議案が求められます。
*法定相続により相続手続きをする場合は、利益相反行為には該当しません

相続人が認知症などで判断能力がない!

相続人が認知症などで判断能力がない場合はどうなるのでしょうか。
遺産分割協議は法律行為であり、判断能力が必要とされます。
認知症などで判断能力がない場合、遺産分割協議に参加することができず、遺産分割協議ができないことになってしまいます。
では、どうするのでしょうか。
成年後見制度を利用することになります。
成年後見制度は、判断能力を欠く人(成年被後見人)に権利を守るための代理人(成年後見人)をたてる制度です。
家庭裁判所で成年後見開始申立をして、成年後見人を選任します。
成年後見人は本人に代わって財産管理をすることになります。
成年後見人が、判断能力のない相続人に代わって、遺産分割協議に参加することになるのです。

(成年後見制度の注意点)

成年後見制度の利用には、注意点がありますので、いくつか紹介します。

法定相続分は確保
成年後見制度は、成年被後見人の財産など権利を守るための制度です。
成年被後見人にとって、不利になる遺産分割協議はできません。
一般に、法定相続分は確保されることが目安となります。

相続人である親族が成年後見人に選任されると、遺産分割協議ができない
相続人として遺産分割協議に参加する立場と、成年後見人として遺産分割協議に参加する立場は、利益相反となります。
この場合、さらに成年後見人の特別代理人を家庭裁判所で選任する必要があります。

申立の際に成年後見人に親族を候補者として指定できるが、選任されるとは限らない
親族を成年後見人候補者として申立をしても、司法書士などの専門職が選任されることが多々あります。
親族が後見人だと、財産管理に不安があるようなケースです。
具体的には、流動資産が高額な場合(相続や不動産の売却により流動資産の増加が見込まれる場合も含む)や、親族間で財産管理の方針に食い違いがあるような場合などです。

成年後見制度は一生続く
遺産分割協議のために成年後見制度を利用したとはいえ、遺産分割協議と相続手続きが完了すればそれで終わりではありません。
成年被後見人が回復し判断能力を取り戻すか、成年被後見人が亡くなるまで、成年後見人の職務は続きます。
成年後見人に専門職が選任されている場合は、毎月、報酬が発生します。
成年後見人は、成年被後見人の財産から、毎月、報酬を受取ることになるのです。

成年後見制度は、年被後見人の権利を守るための制度です。
一方で、親族である他の相続人とっては、遺産分割協議も自由にできず、成年後見人の報酬も発生する可能性もあります。
成年後見制度の趣旨や注意点を理解したうえで、制度の利用には、充分な検討が必要かと思います。
相続財産の内容(その後の管理や共有の問題)・相続税・預貯金の手続きなど諸問題はありますが、法定相続でも良い場合は、法定相続も選択肢としてはいかがでしょうか。

相続人と連絡がつかない、見つからない、行方不明!

相続人と連絡がつかない、見つからない、行方不明の場合はどうなるのでしょうか。
相続人と連絡が取れないというケースは意外とあります。
不仲になって連絡を取らなくなり住所や連絡先が分からない、遠い親族でそもそも顔も連絡先を知らない、などなど。

まずは調べる・・・
まずは調べられるだけ調べます。
相続人を確定する段階で本籍は把握できるので、その本籍地で戸籍の附票を取得します。
戸籍の附票には住所が記載されていますので、住民登録上の住所は判明します。
それを基に、電話番号を調べて連絡を試みたり、手紙を出したり、現地に赴いたりします。
それでも連絡が取れない場合は、周辺の住人・大家さん・管理会社などに調査も行います。
郵便ポストや電気メーターなどもチェックします。

それでも見つからない・・・
住民登録上の住所に住んでいなかった場合、どうするのでしょうか。
家庭裁判所で、不在者財産管理人の選任申立をします。
行方不明者(不在者)の代理人として、不在者財産管理人を選任してもらうのです。
不在者財産管理人は、家庭裁判所の許可(権限外行為の許可)を得て、遺産分割協議に参加することができます。

(不在者財産管理人の注意点)

不在者財産管理人制度の利用には、注意点がありますので、いくつか紹介します。

予納金
申立をした後、相続財産の状況によっては、家庭裁判所から管理費用として予納金を求められます。
金額は、十数万円からで、高額になることもあります。
不在者の財産で管理費用を支払えないケースで必要となります。
管理費用(経費や管理人報酬)を支払い終えた後、余りがあれば返還されます。

法定相続分は確保
不在者の権利を守るため、法定相続分を目安に相続財産を確保をする必要があります。
そうすると、不在者が戻るまで、または、失踪宣告により相続されるまで、不在者財産管理人が財産を管理する必要が生じてしまいます。
それでは大変なので、他の相続人がお金を預かり、不在者が戻ってきたときにお金を支払うという方法もあります(帰来時弁済型)。

相続人である親族が不在者財産管理人に選任されると、遺産分割協議ができない
利益相反
の問題です。

申立の際に不在者財産管理人に親族を候補者として指定できるが、選任されるとは限らない
弁護士や司法書士などの専門職が選任されることがあります。

*ケースによっては失踪宣告の申立を検討します。